Ѣ, ѣ は、キリル文字の一つ、もしくはそれに対応するスラヴ語の母音。現在は使われていない。文字の起源は明らかになっていないが、一説によるとキリル文字 Ь とグラゴル文字 Ⰰ の合字のようである。
呼称
- 古代教会スラヴ語:ヤーチ(ѣть / ꙗть)またはヤータ(ѣта)
- ブルガリア語:ヤーチ(ять)またはエ・ドボイノ(Е двойно / Ѣ двойно、倍増したエ)
- セルビア語:ヤーチ(јать)
- ロシア語:ヤーチ(ятьまたはイェー・ドボイノイェ(Е двойное / Ѣ двойное、倍増したイェー)
- ウクライナ語:ヤーチ(ять)
音素
本来は /æ:/ もしくは /e:/ というスラヴ祖語以来の独立した音素を表していたが、Ѣ が表していた音は後に別の音に吸収されていった。
- ブルガリア語ではЕ(エ/e/、西部)もしくはЯ(ヤ/ja/、東部)になった。
- マケドニア語ではЕ(エ/e/)になった。
- セルボクロアチア語ではЕ(エ/e/もしくはイェ/je/、方言により、西部)もしくはЯ(ヤ/ja/、東部)になった(詳細はシュト方言を参照)。
- ロシア語ではЕ(イェ/je/、西部)もしくはЯ(ヤ/ja/、東部)になった。
- ウクライナ語ではЕ(エ/e/、西部)もしくはЯ(ヤ/ja/、東部)になった。
- ベラルーシ語ではЕ(イェ/je/、西部)もしくはЯ(ヤ/ja/、東部)になった。
なお、キリル文字を使用しないスラヴ語では、Ѣに相当する音は以下のようになった。
- スロヴェニア語ではEになった。
- ポーランド語ではIAもしくはIEになった。
- チェコ語では長母音はÍ、短母音はĚになった。
- スロヴァキア語では長母音はIE、短母音はEになった。
- ソルブ語ではĚになった。
使用状況
前述のとおり現在では用いられていない。
- ブルガリアでは1921年に一旦廃止され1923年に復活。1945年に最終的に廃止。
- セルビアでは19世紀前半に廃止。
- モンテネグロでは1863年に廃止。
- ロシアでは1918年に廃止。
アルファベット上の位置
Ь の次に位置していた。
Ѣに関わる諸事項
半軟音の Ҍ とは別の文字である。
符号位置



